ティムスクラグス カスタムキュー





メーカー名   Tim Scruggs Custom Cues
製作者   Tim Scruggs, Mike Cochran
開始年   1978年〜2010年
ショップ所在地   Baltimore, Maryland
私がお付き合いしたキューメーカーはおそらく30社を超えるが、人として最高なのはまずTim Scruggsだ。
Timとのつながりは、Timの師であるJoss CueのDan Janesに「Timは絶対に良い奴だから、一緒に仕事をしてやってくれ」と頼まれたことが始まりである。
私としては1987年か88年頃にFaxしたりカタログからオーダーをしてみたりしたけど、あまりうまくいかなかった。90年代はあちこちのイベントで何度もブースを覗いたけれど、いつも不機嫌そうに座っていて応対が悪くて…正直ギブアップかなと思った。
それでも本音をぶつけて何度もイベントでミーティングを重ね、たくさんの改善点を伝えた。まずイベントブースは自分の家で、お客さんが来たら笑顔であいさつすること、キューの配置は見やすいように、一番の目玉はどこに置くと良いか、価格もオープンにわかりやすく…etc。Timのキューについても、ジョイントの磨きやシャフトテーパーのことなど随分ストレートに伝えたものだから、相棒のMikeは顔を真っ赤にして怒っていたけれど、Timは黙って聞いていた。
それからのTimはイベントで椅子に座りっぱなしということはなくなり、お客さんとも皆と笑顔で話すセールスマンとして頑張っていた。ブースで作品が売れ残るなんていうことはまずなくなり、年々キューが売れるようにもなった。
しかしまだ私はオーダーをしなかった。彼らの頭の中には『安くすればより売れる』という考えがこびり付いていたからだ。私はその考えがあるうちは手を出さなかった。

そうしてTimと私の距離が縮まっていき、Timと私でとりあえず3年間の独占契約を結んだ。
彼の希望は「キューの価格の上昇」だった、それも彼らの地元でだ。
私の提案は、キューの性能アップ、品質向上…、価格は値引きなし。
地元のお客さんが中心だった彼らにとっては、お客さんからの今までのような注文を断るのはとても大変だったようだが、私との約束をきちんと守ってくれた。
そして3年の間にScruggs Cueの品質は大変に良くなり、評判も上がった。また、日本での広告宣伝や価格もすっかりと当たり前になり、それまでのシンプルなデザインとは全く違ったキューに様変わりした。もちろん彼らのオリジナリティーを活かして。
すべてTimとMikeの努力と頑張りで、ローカルのお客さんだけでなく全米からのコレクター達からも注目される存在になったのはまさしく望外の喜びである。
人柄も実力も、そして目標に向かって努力する姿勢も、2人はとてもすばらしいものを持っていたね。

Original Model

Bushka Model - Superior

Bushka Model - Fancy

Thank you Tim...
I extend to you my heartfelt condolences.


かねてより病気療養中だったTim Scruggsが、2015年6月、天に召されました。

哀悼の意をこめて、心よりお祈り致します。
 最初に直接お付き合いをしたのはもう25年も前のこと…
ずいぶん気難しい顔をした人だな…、そんなイメージだったけど、何度もShopを訪問したら、色々と逆に私に相談をしてくれるようになったよね。毎回Timの自宅に私を泊めてくれるようになり、そして朝ごはんを奥さんが作ってくれる、とても穏やかであたたかい家庭でした。

1997年から私は本格的にTimへオーダーをするようになり、作ってくれたのは約150本ですね。1本1本私の要求を聞き入れてくれ、素敵な作品を作ってくれてありがとう。
約5年前に相棒のMikeと奥さんを相次いで失い、少し辛かったと思うけど、今頃は皆で天国で再会していることでしょう。
安らかにね、Tim.....  ありがとう、Tim.....
2015, By Lucky
 2006年7月、愛する奥様と 2009年Cuemaker of the Year受賞 
2013年4月、NYのExpo会場にて 

TimのShopを訪問した時の楽しかった時間、東京開催の私のEXPOに来日してくれて過ごした日々、たくさんの思い出をありがとう。
 
 

Thank you Mike...
We love you forever...



Tim Scruggsの右腕 Mike Cochran、
現地時間 2010年2月12日未明、突然の心臓発作で天国に召されました。
Mike、最初に君に会ったのは、自分の記憶では15年程前のSuper Billiard Expoだったと思う。君はTimと2人で、憮然とした表情で座っていて…、とても近寄りにくかった。2000年の東京エクスポが初来日だったね。やはりじっと座っているだけで…、それではお客さんが近寄りにくいよとイベントの最後の方に少し注意したことを覚えています。その翌年のSuper Billiard Expoではずっと笑顔で…全く別人になっていましたね。お客さんもたくさん集まり、にぎわっていましたね。
以前からTimとMikeの作品は自分の中ではとても魅力的だったから、自然と意気投合…。それが名作ブシュカモデルの誕生だったよね。日本でのみの限定販売だったので、アメリカ人からオーダーを頼まれても頑固に断り続けてくれた君の心は本当に嬉しかったです。テーパーもバランスも先角も…、メープルから黒檀まで本当にこだわって作ってくれ、それまでのScruggsのイメージを変える作品群になりました。おかげで日本のScruggsファンもとても喜んでくれました、ありがとう。

MikeのオリジナルブランドMCキューも徐々にマーケットを拡げ、これから…、という時だっただけに、君の訃報には打ちのめされました。 ありがとう、とても正直で優しかったMike Cochran、君の名は、作品は、永遠に忘れません。
2010, By Lucky