2003年球's9月号に掲載された特集です。
気鋭のカスタムメーカーをBCAエキスポ会場でキャッチ!
John Showman
ジョン・ショウマン
クラシックスタイルに情熱を注ぐ手作り職人

バラブシュカ、ザンボッティと言えば、現代プールキューの基礎を築いた伝統的なカスタムとして知られている。そしてそのオーソドックスなハギを基調としたシンプルなスタイルと独特の撞き味は、今なおファン垂涎の的となっている。
 CNCの導入などの技術革新もあり、カスタムキューがより幅広いデザイン、特性を持つようになった現代。彼らが活躍した古き良き時代の伝統的な製法、デザインを再現し、さらにはそれを凌駕しようという、大いなる挑戦を続けるカスタムキューメーカーの作品が日本にお目見えした。その名はジョン・ショウマン。ここでは彼が情熱を注ぐカスタムキューの特徴、また彼自身のキューへの想いなどを、BCAエキスポにも姿を見せた彼へのインタビューとあわせてお届けする。

良き伝統を継承するカスタム
現在プールキューの本場アメリカには大小様々なキューメーカーがあり、そのうち、1人のキュー職人を軸にして高品質でオリジナリティ溢れる作品を武器に小規模生産で活動を続けているいわゆる「カスタムメーカー」だけでも数百あると言われている。その中には当然、日本では未だ知られていないながら高い技術を持ち、自らの理想とする性能やデザインを追い求める卓越したキュー職人も多数存在している。今回紹介するジョン・ショウマンもまた、そんな知られざるカスタムメーカーの1つだ。
 ジョージ・バラブシュカ、ガス・ザンボッティといった今や伝統となったカスタム職人が作り上げた、美しいハギを基調とした現代カスタムキューの基本形を尊敬してやまないというショウマン。 彼の手による作品は、その良き性能とデザインを踏襲しつつ自らの技術とアイディアを盛り込んだ、正真正銘のハンドメイド・カスタムキューだ。
2003年日本初上陸
このショウマンの作品が、日本で初めて直接的にビリヤードファンの目に触れたのは、本誌先月号でも紹介した「Super Lucky's Expo 2003」の会場。ここでは、エキスポを主催した「(有)ラッキーズキューインターナショナル」が取り扱う、現代を代表するカスタムメーカー約30人の作品から同社の菱沼厳代表取締役が所蔵する膨大なコレクションの中から厳選された逸品の数々が展示、販売されていた。
「ジョン・ショウマンは現在36歳。日本ではあまり名前が売れていませんが、すでに14年の経験を持つ中堅のカスタムメーカーです。私とは1992年からの知り合いで、その当時のキューも5,6本今でも持っています。私どもはかなりレベルが高いカスタムでないと紹介しないポリシーを持っていますが、工房にも足を運んで確認して、最近の彼の作品を私の目で見て、やっと私も皆様にご紹介する決心がついたんです。」ショウマンを見いだし、日本に紹介することになった菱沼氏が、このように彼との関わりを語った通り、ショウマン製作のカスタムは、マックウォーターやコグノセンティといった独自のデザインセンスを十二分に活かした現代的なカスタムやザンボッティ、バラブシュカといった伝説のカスタムが壮麗な佇まいを見せる中、伝統的な4剣ハギを持つクラシックスタイルで目の肥えたファンの注目を浴びていた。
 そして、その取材の現場でショウマンを知り、その姿に興味を抱いた編集部は、BCAトレードエキスポにショウマンが姿を見せると聞き、菱沼氏の協力を得て、直接話を聞いてみることにした。
以下、BCAエキスポの会場となったラスベガスで収録した、彼のインタビューをお届けしよう。
私自身のゴールは、伝統的なキュー作りの方法と現在の機械などを組み合わせてバランスを取り、
ガスより素晴らしいと言われるほどのハギを作ることなんです。
 

--- まずは、キュー作りを始めたきっかけから聞かせて下さい。


ジョン・ショウマン(以下
S):10代の頃プールをプレイし始めて、それで必要に応じてタップを交換したり自分のキューのシャフト管理などをしているうちに、キューの構造や作り方に関して興味が沸いてきました。私は子供の頃から絵を描いたり物を作ることが好きで、中学校から高校までの「ショップ(工作室)」の授業では、機械を利用したモノ作りが得意でした。それで数年経つうちにグリップや先角の交換など、他の人からもキューの修理を頼まれるようになったのです。

--- 本格的なキュー作りはどうやって「学んだ」のですか?

S:1989年、地元だったペンシルべニア州のピッツバーグからフロリダへ引っ越したのですが、そこで1950年代にキューを作っていたカスタムメーカーのロッキー・ティリスと出会い、3年間かけて彼の下でキュー製作の基本を教わりました。彼はその数年前に脳梗塞を起こしていて、キュー作りは引退していましたが、キューパーツを作る仕事はまだ続けていたんです。そして、1992年の春に今度はアリゾナへまた住まいを変えて、そこで自分自身のキューを作ることを志しました。確か初めて作り上げた物が「売れた」のは、その年の8月でした。アリゾナへはフロリダで付き合っていた彼女と一緒に引っ越したのですが、その2年後に婚約した上で、2人でフロリダへ戻ることにしました。結婚してから家に機械を入れて工房を開き、本格的にキューを作り始めることになりました。
--- 1人で仕事をして、最初からそれだけで生計を立てるのは難しいと思いますが、他の仕事もしていたのですか?

S:もちろんです。結婚して子供も2人いましたから、フロリダへ移転した時に、ミシン工だった経験を活かして製薬の会社に勤めることにしました。そこでは薬のゲル系のカプセルを仕上げる機械の管理をしていたんですよ。ようやく今年になって、初めてフルタイムでキューを作れるようになりましたが、年間の製作本数はおそらく15-18本くらいかな。パートタイムで製作していた頃の倍くらいにはなっていますが、手作りですから今の所はもうそれ以上にはならないと思います。

--- あなたのキューを一見するとガス・ザンボッティそっくりに見えます。近年なかなか見られなくなってきたクラシックなデザインにしたのはなぜでしょうか?

S:ペンシルベニアで育ったこともあって、1970〜80年代には、ポール・マティやリチャード・ブラックなどの東海岸で注目されたキューに影響を受けましたね。それからもちろんバラブシュカとザンボッティの大ファンでした。最近多くのカスタムメーカーは、伝統的な作り方やデザインから離れ、「これがベターだ」というメーカーが少なくありませんが、私が思うには、それは伝統的なやり方がより難しいと言うことが主な理由だと思います。私の場合は最初からクラシックデザインに憬れ、ガスやジョージが残した確かな足跡やその伝統的なやり方を続けたいと思って、自身のモデルとしているんです。自信過剰なわけではなく、私自身のゴールは、伝統的なキュー作りの方法と現在の機械などを組み合わせてバランスを取り、ガスより素晴らしいと言われるほどのハギを作ることなんです。
素材、製法は正統派のクラシックスタイルを踏襲。

--- デザインのほかにショウマンさんの作品の特徴はどんなものですか?

S:品質と感触ですぐに私のキューだと区別が付けられることを願っています。中途半端な作品は私自身認めることが出来ません。例えば、キュー作りを始める前からハギを作る方法は知っていてもちろん作ることも出来ましたが、この頃に自分で作ったハギの品質は完璧ではありませんでしたから、最初はバートン・スペインのハギを利用していました。そしてベニアについても、やはり入れたいとは思っていましたがその技術が完璧に出来るまではプレーンな作品しか出しませんでした。デザインとしては、ザンボッティやバラブシュカ風、例えばプロペラ形のインレイなどが多いですね。もちろん、そのスタイルに自分のセンスも加えています。そのほかの特徴と言えば、バットキャップの長さと先角の短さでしょうか。

--- 通常より長いバットキャップをつける理由は?

S:それは、元々ガス・ザンボッティとの混乱を招かない様にした為だったのですが、この点については1998年からジョイントピンに拡大鏡でしか見えないマイクロプリント・スタンプで名前と製昨年を入れるようにしました。元々キューにサインを入れることは個人的に好きではないし、同じようにジョイントやバットキャップにロゴを入れることにも全く興味が無いんです。
基本はメイプルに4剣ハギ。
絶妙なバランスは見る者を魅了する。


--- では短い先角については?

S:1970年代にもビル・ストラウドが短い先角を出したらしいのですが、今のカスタムメーカーではなかなか見られませんね。プレデターも今短くしていると思いますが、見越しが少なくなるとも聞いたことがあります。私のキューがそうなったのは、ニューヨークのプレイヤー、ジョージ・サンスーチにキューを頼まれて、彼がそのキューの先角を勝手に短く切ったのが始まりです。その先角はアイボリーで出来ていて、先端を切ってしまうとキャップが無くなってしまいますから「言ってくれればいいのに」と彼には言ったんですけどね。どうも彼は私のキューが好きみたいで、今までに5本頼まれています。そんなことがあってからはほとんど短めの先角にしています。

--- 一本のキューを仕上げるのには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?

S:基本的な4剣ハギのモデルは40〜50時間位でしょうか。しかし、それはもちろん作業の実時間で、期間的には数ヶ月に渡ります。一番長い時間をかけて仕上げたのは3年。一番早く出来上がったのは3ヶ月ですね。

--- パーツは全部自分で作っているのですか?

S:私が購入するパーツはジョイントカラーとピン、タップとバンパーだけです。先角とキャップはアイボリーにしていますからそれも自分で作っています。クラシックなデザインということで、基本的にはメイプルのフォアアームと4剣ハギのスタイルにしています。私は4剣ハギのキューが一番作りにくいと思っているので、それで出来ている製品が自分で認められるほどの完成度であれば毎回誇りに感じています。

--- 伝統的な作り方の中で苦労するところはどんな部分なのでしょうか?

S:私はキューを作るプロセス全てが好きです。ただ、今現在はまだ外でフィニッシュをスプレーしているので、たまにホコリや虫の足跡などが入ってしまうことがあります。その場合ははやはりやり直ししなければならないことになりますから、ちょっとイライラしてしまいますね。その他に苦労するのはベニア先端の合わせとラップ側にある斜め継ぎの正確性ですね。CNCマシーンで切られるポイントは丸くなるし、ラップ側はベニアが入っていなかったり重なってしまうことがありますね。CNCマシーンが良い、悪いということではないのですが、私はパンタグラフでインレイを作って手で入れることを好みます。



--- 全てモデルはワン・オブ・ア・カインド(一点もの)ですか?

S:そうです。たまには似たようなデザインで数本作ることもありますが、その際には必ず別の銘木や素材にしています。そして私はもちろん自分のセンスに合わせたスタイルを作るのが好きですし、お客様が求める個人的にデザインした、いわゆる本当のカスタムメイドのものを作るのも好きなんです。
2003年球's9月号に掲載された特集です。