ヨモヤマバナシ

【 Long time no see!! 】

掲載日 2011-01-25

ウ〜ン・・・
近頃頂戴するメールに、ちと耳が痛いのがチラホラ…
(ヨモヤマ愉しみにしております…)
(もう前回から間もなく6ヶ月、次回作は…?)
あのね、君達…読むのは1分書くのはへたすると一週間かかる時もあるんだよ!
そんな気軽に前回から6ヶ月って…ゲッ!!180日かい?!
下手な言い訳をすると、その間何回か書きました。でも、最後が決まらないうちに、いつもどこかに消滅してしまうのです。
実は、自分は書くのは大好きで…でも陽の目を見ないうちにどこかに…なんてことはよくあります。

よし! いつもはテーマを決め、書きますが、今回はフリーハンドで行ってみようー!!

自分は今、キュー作りを始めていますが、やっとそれは端緒についたばかり。とってもキューメーカーなどとは呼べるものではありません。
木を削ることを早朝から夜中まで…まさしく木くずまみれになってやってます。削っているのはAberichからゆずり受けた自然乾燥のメープルです。
ユダヤ人だった彼は、膨大な木材を買って、ストックしてキュー作りをして、そして財産を作るはずだったのですが、キューが思ったほど売れなかったのでしょう。生活には困らなかったようですが、生涯独身で質素な生活だったようです。
その残された木材とは、もう最終サイズまで削ったものや途中までの物が大半で、細くて使えないものもたくさんあります。
彼のShopがあったのはフロリダのマイアミ。それもビーチから3本程入った通りの場所で、エアコンもない年中湿度の高いところでした。
そんなところに1950年頃からじっと削られ時間をかけて寝かされたメープルが、なぜかはるばる海を渡ってこの東洋の島国に来ています。ちっぽけなみちのくの工場で活躍の場を今か、今かと待っているのです。
ウ〜ン、これはただ事ではないぞ。責任重大だ!こんな年代物の時代外れのメープルを手にしてどうやって物を作ろうか?どんな物を?!
うかつに手を出すと、せっかくの素材が海のもくず、イヤイヤ陸の木くずとなってしまう。

ここで再確認しておこう。
このメープルは1950,60,70年代にAbeやAbeのファミリーが購入したもの。ずっと自然乾燥である。これがキーです。
カットされたのは、当然その前で、生育していたのは1900年よりも前であろう。
自分が、例えば100本カットしてみて…もし100本曲がったら、どこから再購入できるの?→→→No!!
こんな年代物のシャフト材はだ〜れも持ってないし、手にすることすらできない。そしてだ〜れも最善のカットの方法すら知らない。残念ながら素材の特徴も、処理の仕方もどこにも残ってません。こんなすごい素材を使っていたのはRanbowやMartin、George、Gusの時代で終わり。誰からも教えて貰うことはできないのです。もちろん、失敗したらオジャン!

去年Jerry McWorterと話をしたら、彼はこう言っていました。
「少しずつするべきたよ、Lucky。一度間違うと全部ムダになるよ!」 ウン、彼は賢いですね。でも、僕の人生は永遠ではありません。



自分の今までの経験から、この天然素材をどう扱おうか…謎ですね…考えるとハゲちゃいますね、たぶん!
あっ、だからキューメーカーにハゲが多いんだな。BillもBarryもDennisもRandyも… そうか、これがメープルの謎だ!!ハゲれば一人前だ!今日からワカメや昆布は食べないようにしよう。よ〜し、これにて一件落着。
ん〜、こんな結論ではだ〜れもメールをくれなくなるな、きっと…嬉しいようなさみしいような…。

メープルをカットするのに、自分は旋盤にルーターを付けてカットしていますが、メープルのカットの方法は何通りかあると思います。
一気にカットできるのは、なんといってもテーブルソーで、大きなブレードに60とか100とかの刃が付いていて、一気に何ミリも削っても平気です。これだと角材から丸材には一回でなります。
このやり方を使っているのは、有名なところではSouth Westですね。それからMottey、あっ、今は引退したので、James Whiteです。もう一人は、Showmanですね。MotteyはこれをCNC制御にしてカットしていました。
この方法ですと、一気にできるので時間がかからない、と簡単に思いますよね。イエイエ、一気に削れるのは最初のところだけで、途中からは自然乾燥のメープルはやはり手がかかります。
削っては寝かせ、寝かせては削って…大変気の遠くなるような工程が待っています。
他の人のほとんどは、自分と同じで旋盤にルーターを付けてカットしていると思いますが、これがまたせんばんだけに千差万別なんです。
ナニ…?センサマンベツと読みます?じゃ聞くけど、万物の霊長は?じゃ万有引力は?マンベツかバンベツかでここを読者層の境界線としよう。バンベツの人だけ読んでね。

ルーターで削るのに回転方法や刃のあて方、刃の径や素材、スピード、カットする回数、1度に削る深さ、そして木材を留める力。6mmの刃で、25000回転で、1分間に進むのが…なんてやってますと、ハゲます!!だって1秒間に412回もまわっていて、6mmということは2,472mmで、2枚刃だと4,944mm、3枚刃だと7,416mm、4枚刃だと9,888mm、最大で木材にあたる訳です。
これは旋盤により違いますが、木材の回転数が、100回転/分、200回転/分、300回転/分などとなっていて、直径が31mmの木材があたる距離は、刃の横の進行スピードにより違ってきて…私は今、5分位で行っていますが、Daveの所はもっと遅かったし、Gina cueなんかは大変スピーディ!!
どうゆうことかと言いますと、私が100m走る間にErnieは400mトラックを1周して、同時にゴールするようなスピードです。でもその前に彼は心臓麻痺を起すし、自分も…ヤバイ!!Ernieを殺すにはまだ早いので、ウサインボルト(100m9秒58)でどうだ!!
自分が100m走る間にボルトがトラックを一周… いやいや、ボルトは200mでバテテ戻ってこないから…僕の勝ちだ!!
これは変だぞ?どこで間違ったのだろう???
分かった!同じ100mで競えば良いのだ!
ボルトが100m走る間に水泳のベルナールが100m自由形を泳ぐ感じだね。アレ!!ベルナールは50mでターンして戻っちゃった?! ん〜、今日は頭の切れが悪いな、Poor Imaginations!!


自分は木材を削る時、表面の光沢を気にしています。ところが、自分の持っているAberichからの素材は、木目もストレートではなく、あちこち錯綜して年輪も密でない物が大半です。色も茶色!!
自分の今までの常識というか、ここ20年程の与えられた知識を説明すると、シャフト材の色は白く、木目はストレートで年輪も1inch・15本overが一級品!というのとはまるきり違っています。
Abeの木を旋盤にかけて削ると…刃の当たった所は逆毛をたてたようになり、なでられてカットされた部分とは、同じ一本の木材なのにまるきり違う表情になります。
これでは、マ・マ・マズイ!!光沢がない!!
どう考えても水分を余分に吐き出すか、吸湿するのはこの場所なのは、賢くない自分でもわかる。おそらく容易に木が曲がるかもね。

あ、そうそう、木が曲がるということについて、今日は一言。
『木は曲がる』とはあたっているけど、正確ではない。木はネジれて方向を変えるので、曲がるのではなく、正確に表現すると、『ゆがむ』というのかな?
「社長、ネジれるではダメなんですか?」 ウ〜ン、うちのスタッフも一言多いな、ウン…チェッ!!

自分(私)が、工場に入るようになり、いろいろ考え事をしているのを見て、周囲は何と言っているか紹介しよう。
「どうせ何もできないし、何もならないと思う」…女性A
「ヘェーッ、面白そう!!役に立たなくても年とって好きなことをするって良いですねぇ。」…女性B
「フ〜ン・・・・・」…女性C
「ヘェーッ、ところで誰が機械動かすんすか?」…男性A
「何かピンとこないすね。それで何作るんですか?バラブシュカとかザンボッティみたいなの?今更誰も買わないすよ」…男性B

これらは全て正しい、正しいのであろう、イヤ正しいのかもしれない… でも、景気が悪いせいか皆少し正直すぎません?昔は良かったね、60年代が懐かしい…。オブラディ・オブラダ・・・オブラート!!
男は傷つきやすいのである。あぁ、自分は草食系だったのか…よし!ワカメの替わりにホーレンソウを食べ、頑張ろうーっ!!欲しがりません!髪の毛はっ!ハゲムのじゃーっ!!



タン・タ・タ・タンタ・タンタンタン、 タンタタ・タンタ・タンタンタン・ピ〜プォ〜ポ〜ッポ〜
「ウ〜ン、チョットダケヨ〜」 悩ましい、ねむれない!!


私が今カットしている素材は古(いにしえ)のキューメーカー達は、皆少しだけ削っては寝かせ…寝かせて頃合いを見計らってまた削る、ということをしてきた素材と同じもの。
どういうことか、というと、薄皮をはぐように削り、新しい表面と外気がなじんで落ち着いた頃に、また薄皮を削って新しい表面をむき出しにする、というやり方。
カットを始めてから最終サイズにするまで、1年半から2年はゆうにかかります。そして、先人達はそれらを直前のサイズまで削り、数年寝かせて我々の手に渡るようにしてくれた訳ですね。
これは意図的にした訳ではなかったのだろう、ということは今でこそ、私は考えることが出来ますが少し前の私なら美談化して、「昔のメーカーは一本一本手作りで…何年も寝かせてからシャフトを製品化したのです。」と考えていました。
ただ、Aberichの山のようなシャフト材を見るにつけ、???と考え、60年代や70年代を思い浮かべることがあり理解できたことがあります。
キュー作りをするにあたり、一つの工程は一度に大量にするのが結果的に大変効率の良い方法である、ということです。

Aberichは大量に木材を仕入れ、削って寝かせたまでは良かったのですが、大量に販売、というところでしくじったのでしょう。
作られた物が、売れなければいくら良い素材でもまさに宝の持ち腐れ! かくして何十年もただ眠るだけだった訳です。一度に大量に削ったのは、何も彼だけではなく、GeorgeもGusも昔の人は皆、同じようにしたことだと思います。
かくして最初の頃に作られたキューには若いシャフトが付きましたが、年を経るに従いシャフトも、というかシャフトだけは古い物、寝かされた物が使われるようになります。
製作開始後10年経たShopからお客の手に渡るキューはバットもシャフトも10年前にカットした物で、インレイを入れたりして仕上げられたのが、その時だったということなのです。
10年かけて「チョットダケヨ〜ン○」などと削られた素材ではない、ということはお伝えしますね。

さて、ここからが私が眠れない本題です。
イヤイヤ、ここからが本題なんですよ、ア・ナ・タ…
私が眠れないのは、少しずつ、チョットずつ衣を脱ぐような方法ではなく、一度に全裸にスッポンポンに素材を削れないか、と悩むからです。
自分の素材は現行のキューメーカー達の物とは違い、かなり繊細であることは間違いありません。
強制乾燥ではないし、私は大半のキューメーカーがしているように薬液に浸けるのも好きではありません。

現在、他のキューメーカーがしている方法は、どれも私の素材には合いません。私の好みでもないです。誰かに聞きたいなぁと考えても、私と同じ素材を用いていた人たちは皆、もう天国に行っています。
彼らは、今の私と同じことを考えていたのでしょうか?
何人かはきっと考えたでしょうが、もし私の考えを話したら、皆一笑に付してしまうでしょう。
事実、私がBarryにAbeからのシャフト材のことを少し話したら、
「オ・オ〜!!そんな木目(Grain)が乱れてるのなら、かなり曲がるかもしれないね、Lucky。自分ならその素材は使わないな、誰も喜ばないしね。今は白いシャフトで、木目がまっすぐ通ってないとね。」
(ウ〜ン、これでは一度にカットするには…なんて聞くだけ野暮だな。)

よし、Showmanなら古い素材に一番詳しいからきっと・・・
「ウ〜ン、なんでそんなリスクの高いことをするんだい?するなとは言わないけど…、一度削って寝かせ、また削って…とやれば良いのに…。自分の知っている限り、誰もそんなことにトライした人もいないし、もちろん成功した人もいないよ。まぁ、たくさんしないことだね。」
そりゃそうだ、知っていたら、もうとっくにやってるからね。
でもね、どうせするなら誰も思いもつかないこと、それをしてみたい と思いませんか?
自分は薬液に浸け込んだり、貼り合わせたり、空洞にしたり…という最先端の小手先のごまかしでなく、正面から取り組んで最高のシャフトを作りたいんです。
皆が、削っては乾燥して、落ち着いたらまた削って…と繰り返した理由は理解していますが、敢えてその常識をくつがえしたい。
本物の素材、木、本来の撞き味を味わっていただきたい。そして、最高の撞き味のシャフトを作りたい、と心から思います。腰のある硬くてしなりのあるシャフト、硬くて粘りのあるシャフト…

名人達は、皆、削っては乾燥して …木が落ち着いたらまた削って、寝かせて…と、1本のシャフトを作りあげるまで、何年もかけたのです。
自分は皆が何故そうしたのか、何故そうしなくてならなかったのか、ということに思いを巡らせ理解し、その良い点を残しながら、歩留まりが悪くなる欠点を少なくしたい。
50%でなく、大体90%位にならないかな、と考えています。
大変貴重な素材だから、無駄にすることなく、そしてなかなか味わえない本物をつくりたい。では、どんなものが本物なのでしょうか。

自分の目指すものは、腰があって尚且つ硬いシャフトです。硬くて、尚且つ粘りがあるシャフトとでも言うのかな?
キュー作りで一番時間がかかり、尚且つ難しいのは絶対にシャフト作り。作業で一番難しいのは先角とTip、というのが自分の今の考えです。
昔の名人達(プレイヤー)が先を争って欲しがったような物を日本のみんなに試してもらいたい!!愉しみにしていて下さい。