ヨモヤマバナシ

【 ラウンドとスクエアの違い 】

掲載日 2009-06-13

日本ではゴルフの石川遼くんが最終ラウンドでどうとか、大学時代に私の地元仙台にもいたことのある藍ちゃんがアメリカツアーで1ラウンド8バーディーとか、明るく楽しい話が多いですね。
自分はゴルフはしたことがなくてさっぱり…。
ラウンドというとどうしてもプールキューになってしまいます。
そりゃそうです、キューがラウンドでなくて三角や四角だったら、大変なことになっちゃいます。ストロークするたびにブリッジする指から血が吹き出しちゃう、赤いラシャだと誰も気づきませんがね…。シャフトはメープルではだめだよね、やっぱり…アフリカンパドゥークとかバビンガ、メキシカンココボロなどの赤味の強いもの…、おーっ!ブラッドウッドが一番かっこいい!
USオープン決勝が試合の途中で流血戦になりドクターストップで勝ち負けが決まった、なんてことにもなっちゃいます。こんなことにならないためにはやはり手袋、グラブが大事、だから遼くんも藍ちゃんも必ずしてるでしょ?


暑いんですよ、アリゾナは…。思考回路がホッカイロみたいになってしまいます、ホントです。


でも、昔はシャフトは四角(スクエア)だったんですよ。
うそじゃないって…、今でこそラウンドが当たり前になりましたがね。
何の話かというと、キューメーカーへ納品される時のシャフト材の形状です、わかってたでしょ?
今日はこのシャフトが「スクエアの状態」と「ラウンドの状態」ではどんな違いがあるか、というお話でーっす(パチパチ…)!!


シャフト材がラウンドかスクエアかでどう違うかというと、まず、プレイヤーサイドではストロークのスピードが違くなります。速いと血が出ちゃうからね。
キューメーカーサイドでは…(ここが大事だよ、お兄ちゃん!)作るスピードが違います。スピードは速くなりますが、なぜか血は出ません、マジック!がんばれ!!


では、キューメーカーにシャフト材が納品される時に、1インチ四方のスクエア材と、1インチ直径のラウンド材ではどれほど違うのでしょうか。
まず、断面の面積を比べましょうか。数字がわかりやすいからね。
スクエアの方は1×1=1ですね。
円の面積=半径×半径×3.14だから…0.875です。
どちらもあまり変わらないジャン!!と思うでしょ?でもキュー作りにおいてはこの差はまったく違います。ラウンドでは最初からセンターが取れるので、どっちをジョイント側にしようかな、とすぐに考えられるのですが、スクエアではまず仮のセンターを決めて丸くする作業をしなければなりません。対角線を使って中心を決めれば簡単、と思うでしょ?でも木材は微妙にいびつだからそれではだめなんだそうです。
じゃ、ここはそこにいるお兄ちゃんにやってもらいますか。いーかい?両サイドに仮のセンターをつけて穴を開けてね、ドリルでだよ…、同じ深さにするのが大事だからね、手に穴開けないように、いてぇーぞー、きっと!


こっちはお兄ちゃんにやってもらう間、少し頭の体操をしましょう。
1インチは2.4?ですね。では、1インチのスクエア材の対角線の長さを求めてみましょう。
答えは対角線を底辺として直角二等辺三角形を作り、底辺の2乗=辺の2乗+辺の2乗だから、底辺の値は√2となります。ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ…。大体1.4インチだって?あ、お兄ちゃん、測ったんだね、早いわけだ。(これを読んだ娘から「直角二等辺三角形の底辺の長さを求める公式は1:1:√2だと思うんだけど」と言われました。確かに、それもあるね。)


この1.4を1になるように削っていく、ということが角材を丸材にする、ということなんです。が、1度で削るのはとても無理で、刃がイカれてしまうしマシンにも負担が大きくなるから、4〜5回かけて削りましょう、となって旋盤を設定するわけです。今日は計算しやすく4回にしますね。そして旋盤に1本1本セットして削っていくのですが、これが大変…。
因みに1回のカットで0.1インチ削るわけですが、回転してる物に刃を当てるので削りたい分の半分だけ刃を当てます(両側から削られますからね)。間違っても一気に0.1インチいかないように!いきなり細くなっちゃいます。
今回は、0.1の半分で片側0.05インチずつ削るわけです。これをこちらでは『フィフティーサウザンス』と表現します。50/1000、ということです。なぜ5/100ではないのか?ということは私は知らないザンス!どこかのドクターに聞いてね(^^)。


あ、お兄ちゃん、もう出来たって?早かったね!まぁたった10本だからな。…って、こりゃひでーな、きちんと測ってないでしょ…。しょうがない、こっちで用意した50本でやりますか。怒るなって…アイスあげるから、な、Blue Bellのアイスだぞ。


さて、次は削るのにかかる時間を計算しましょうか。
スクエアを1回(0.1インチ)削るのににかかる時間がDaveの旋盤では約8分(シャフト材を交換・セットする時間も含め)かかります。最初のコーナーを落とすだけで50本だからトータル400分!!それを4回するんだったよね、さっきの計算では。
…ということは、マシンが順調に動いてくれて、こっちも毎回終わったらすぐに次のシャフト材に交換するマシンのような人間として、1600分だよ!その他に、さっき前もってやっていた穴開けに約100分かかっているから…、全部で1700分!!…丸と四角でこんなに違うの!?一体何日かかるのよ、たった28時間20分?寝てないじゃん、ごはんは?…お茶漬けが懐かしいなぁ…。


昔のキューメーカーは偉かったよね、こうして寝ないでシャフトを削ってキュー作りをしたのですから…。
え、まだ丸くなっただけだろ、太いって?…とりあえず丸けりゃいいんだよ!そこが今日のテーマなんだから。
スクエアから血が出ないシャフトを作るのに血の滲むような…(うーん、冴えてるな今日も♪)努力をして、こうしてやっと50本のラウンドが手に入ったわけですね。
ここからきちんとセンターを取り直して、やっと「どっちをTipエンドにしようかな」「お、これいいじゃん」「誰にこのシャフトを渡そうか」などという1人楽しい時間もあるし、「あいつは乱暴だから、物の価値を知らないからやめよう」なんてこともね…。「なにぃーっ、リングを移植?シャフトをつぶすわけ?そんなやつにゃー俺の大切なキューは2度と渡せねーな、だめだ!」と昔のキューメーカーならきっと顔を真っ赤にして怒るだろうね。(脱線、ごめん!)


ここから、というか、最後の段階に仕上がるまでのシャフトは少しずつテーパーをつけて削るだけなんです。
旋盤にガイドになるメタルかハードプラスチックのテーパーバーと呼ばれるものをつけます。これは調べたところかなり昔から使われていたようで、1970年頃にはTadさんも使っていた、とどこかに載っていましたね。
もうさっきまでのような0.1インチなどというのは無理で、1カットで10サウザンスとかになります。ジョイントの径は0.85インチが普通で、先角は0.512かな。皆さんはこの辺はわからなくてもOK!


自分は昔からカスタムが大好きで、その特に大好きな部分がデザインです。そりゃ、今の方が比べられないほど凝っているしインレイ数も入っているし、仕上げも文句ないし、「すごい」と言えますね。でも、何か味がない、ゆとりというか、雰囲気がないように私は感じます。昔のものの方が1つ1つに作者の思いというか、個性といいますか、ネ。
その源になっているのが、実は今は省かれてしまっている時間ではないでしょうか。一見無駄に見えるようなこの時間が、実は本当にキュー作りが好きだった面々にキューに対して考える時間を与えてくれたのは間違いありません。


話を戻して、今のラウンドのシャフト材からはどのくらいの歩留まりでシャフトが作られると思いますか?
メーカーにもよりますが恐らく80〜90%ぐらいではないでしょうか。では昔のシャフトはどうだったかと言うと、私の今まで耳にした話では50%ですね。
丸材の50本から仕上がるシャフトは40〜45本で、1バット2シャフトと考えると約キュー20本分です。
それに比べて角材の50本からできるのは25本のシャフト、キュー12本分なのです。
だいぶ違いが出ているのがわかりますか?尚且つ手間と時間が比べられないほどかかっていますよね。
シャフトを手にしてみてそんなことがわかったら怖いですが、でも知識としてはカスタムファンとしては知っていてもらいたいな、と思います。


また話が少しそれちゃうけど、
「昔の古い木ほど曲がるよ、ラッキー、特にスクエアからラウンドにする時が1番曲がるから注意しなさい。十年経った木でも表面をオープンにすると曲がりやすいからね。きっと呼吸始めるところとそうでないところがあるのだろう。」
このように昔のものを扱った経験からのアドバイスは本当にありがたいですね。これを教えてくれたのはGinacueのErnieですが、スクエアの方がやはり曲がりのリスクが高いことを語っています。昔の方が断然曲がったわけです。今は彼も丸材で仕入れていますよ、もちろんね。


それに手間と時間が大変、というほどかかっていることがおわかりいただけたでしょうか?
この計算の元になっているのはDaveの旋盤のスピードです。彼のギアの設定は他のキューメーカーよりも少し遅いようなのはわかりますが、他のメーカーを参考にしても時間が半分になるなどといった大きな差はないのです。多分カスタムメーカーでは削るのにかかる時間は1本1回当たり5分から6分ですね、間違いありません。
Daveにこのことを話しました。もっと早くできないか、と交渉したのですが、答えは「No!!」。
彼のマシンと環境では今のスピードがBESTで「1本1回削るのが6分20秒、交換にかかるのは30秒で余裕だから、7分弱だ。」と言い張ります。
ちょっと待ってよ、6分20秒で止めたら四角の大きいタップが必要になっちゃうよ、ヘタすりゃ赤いラシャが必要かもね…。四角いタップなんてかっこいいね、まるで判子みたいで…。●●オリジナルとか■■スペシャルとかでてきたりして…!紋付のケースに入れてみたら売れるね、絶対!!


この「1インチのラウンドと1インチのスクエアの違い」がわかるまで、自分はおそろしい意見を持っていました。
今だから白状しちゃいますが…George Balabushkaを完全なキューメーカーとはどこか、認めていなかったのです。ハギ材を作るだけの設備がなかったために彼は色々な人からそのパーツを購入してキューを作り上げていました。有名なところではBarton Spain、John Davis、そしてGus Szambotiです。この他にはブランズウィックのタイトリストもかなり残していますね。
そのGeorgeを自分の心の中のどこかで、彼はハギを作れなかったから別なカテゴリーだ、と認識していたのです、ごめんなさい、George。
今ならわかります、Poolcueというものの基本的なスペックとか議論されるべき性能とは何かを作り上げたのがGeorge Balabushkaで、彼が当時ほかのキューメーカーやプレイヤーに与えた影響は計り知れないものだったはずです。今でも彼の作品を目にすると、なんともいえない雰囲気とバランス感覚が見事です。そしてなんと言っても素晴らしいのがシャフト!!シャフトでキューを語られるメーカーなんてGeorgeと彼と親交のあったGus以外…昔のサウス、昔のTad、昔のJW、Old Joss…、みーんな昔だ!