ヨモヤマバナシ

【 アリゾナ便り1 】

掲載日 2009-05-09

みなさんこんにちは。

今日はアリゾナからの原稿です。
日中の最高気温が今日は106°K、明日は110°K(46℃)だそうで、とにかく暑いです!!

こちらに来て生活をしていて感じることは、とにかく物を買うのはWeb-Siteからです。何か欲しいとe-bayを見ますね。
アメリカでは、Netビジネスで他の州とのやりとりをするのには消費税が掛かりませんから、税金に敏感なこちらではe-bayを活用しています。
逆に何か余分に持っていたり、いらない物があると、皆ためらわずにe-bayに出品して、少しでも現金に交換します。
One man’s trash、another man’s treasure。と言うそうで、アメリカには安いものを大量に仕入れて、ネットで少しずつ売って暮らしている人が大勢いると言われ、驚いてしまいました。


なぜこんな話しをするかというと、Bob Manzinoと昨日話をしていて「Brazilian Rosewoodを探しているんだけど見つからないんだよ。」と言われました。
e-bayは?と言ったら、「e-bayに出ている物はほとんど全部がBolivian Rosewoodで全く違うものなんだ。」だそうです。
Bolivian Rosewoodというと、なかなか日本人にはピンときませんが、別名はパオフェロ。
そうSouth Westでよく使われる木です。
ただしSouth Westでは木目のまっすぐな部分を用いますが、Bobの言っているBolivianは根っこのフィギュアが深く、色味が濃い部分のことです。
ではBrazilian Rosewoodをストックしている人は?と考えると…
私が知る限りT.S、B.S、J.S、D.B、P.Mの5人で、皆、本当に少しだけです。(全員合計しても30本分ぐらい)
誰もBobに融通する余裕はないし、他人に自分の貴重な素材をあげたり・売ったりすることはまずありません。
アメリカ政府は、ブラジルからの伐採品の輸入は禁止していますが、既に伐採された根元の切り株(Stump Wood)は輸入を認めており、皆こぞってこれを手に入れようとして、Webに眼を向ける訳です。
Brazilian Rosewoodは昔から楽器、特にギターのネックやフィンガボードに重宝されてきました。
これについては私より詳しい人はたくさんいらっしゃいますので割愛しますが、昔重宝された物は、杢目のまっすぐな物で、根っこ付近の紋様のある物との価格差は比較にならないほどだったそうです。
でもここ20数年、切り株のみの輸入となり、根っこだけ…ということは、まっすぐの物より、紋様のあるものばかりを目にする訳で、今では細かく入り組んだフィギュアの物が好まれるようになってしまいました。
それで紋様の似ているBolivian Rosewoodをネットで売りさばく人が増えてしまった訳ですね。
因みに昔作られた楽器のネックの修理には、もう良い物が手に入らないために、杢目と色味の似ているPalisanderという素材を用いることが多いそうです。
Brazilian Rosewoodは強烈な甘い香りと独特の光沢があり、色味はメープルのような黄白色の物から、あずき色のような物、茶色、こげ茶、これらが混ざったような深い色味の物など、大変バリエーションに富んでいます。
ココボロに似ていたり、マッカーサエボニーに似ていて厄介ですが、重さはココボロやエボニーよりもずっと軽く、とても澄んだ高い音がします。
ローズウッドには、他にホンジュラスローズウッド、インディアンローズウッドなどもよく用いられますが、色味は似ていても、杢目が少し大きめだったりで良いものに当たる確率は少し落ちますね。
伏兵としては、バーミーズローズウッドとボリビアンの根っこ使った作品の中に、おっ!!と驚くような作品が出てきますね。


では次に…何を書こうかな?
私の好きなパープルハートについて書いてみますか。
パープルハートはとても重くて、Pool Cueのバット素材としては黒檀と同じくらい尊重されるべき素材です。
どういう風に活用するかは作り手により違い…というか、ピンやテーパーとの兼ね合いもあり、はっきり言ってきちんと良さをキューに活用している人は今のところいませんね…。
誰でもいつでも格安で手に入る材料のため、あまり見向きもされません。
パープルハートはほとんど杢目も見えませんが、本当にごく稀に、紋様が流れるように入っていたり、フィードルバックの様に3Dの物がありますが、そんな杢目のキューを見つけたら、それは早い者勝ちですね。

パープルハートをキューのボディに活用しようとしたのはJoss cueのDan JanesとBlack BoarのTonyでした。
この二人の巨匠は活躍した時代も、それぞれのキューに対する考え方も全く違いますが、素材の良さを強く認めながらも、思ったほどのプレイヤーからのフィードバックもなかったりで追求するのを断念したのは残念なことです。
キューのテーパーと求める打感との兼ね合いが如何に難しいか、複雑であるかということの表れでもあるかと思います。素材の硬さ、重さもありますからね。

今後、どんな構想で誰がこの素材を活かしてチャレンジするか、私の愉しみの1つですね。
私ももちろん自分の頭にあるもの作ってみたいと思っていますよ。

パープルハートとブラッドウッドは生木で見ると、ほとんど見分けがつきません。紫がパープルハートで少しだけ赤味掛かっているのがブラッドウッド?実際はそんなにはっきりしていません。
ここに赤味のバビンガが入ったらもうお手上げです。重さも何も皆ほとんど同じですから、言い切った人が正解です(笑)
キューメーカーが皆間違わないのは、仕入れた物をきちんと把握しているからで、ラベルがなかったら、やはり分からないと思います。


よし、次はココボロ!!

ココボロが好きというキューメーカーは多いです。バラ科なので削ってみるとやはり香りがします。ココボロはメキシコからずっと南アメリカの各地に分布していますが、産地により少しずつ杢目や色味が違います。キューメーカーが好むのは、大体がメキシカンココボロですが、燃え上がるような模様の紫がかったり茶だったり、黒だったりというココボロは、もうなかなかお目に掛かれません。
杢目の良い部分はキューメーカーだけでなく、楽器メーカー、家具メーカー、ナイフやピストルメーカー、杖やドアノブ、それからペンメーカーなど、たくさんの人が眼を光らせていますので、良い部分を安く、などというのは到底無理ですね。
売り手の方も大きいピースで売るより小さく切って売った方がお金になるし薄くカットして売れるココボロは今ではドル箱になっています。キュー作りに都合の良い部分をそのサイズというのは本当に稀でなかなか出てきませんね。
意外に手に入れても面白そうなのが、ニカラグアココボロです。
明るいオレンジ色で模様も深く、硬さも重さもキューにはうってつけ。
ココボロ使いの名手には、Ginacue・Mc Worter・R Cudyなどの西海岸のキューメーカーが多いです。きっとメキシコが近いからでしょうね。


あ、そういえば!
自分で木を削ってみて、強烈に後悔したことがあります。
ジルコッテという木をご存知ですか?
昔Mc Worterに言われたことを今思い出しています。
確かに言われた!!
「ジルコッテはとても埃っぽくて一度削ったら二度と作りたくなくなるよ。」と言われました!
ホントにホントーに旋盤に掛けると、空中に灰のような物がフワーっと舞い上がるんです。
マスクの目からでも入ってきます。
一回削っただけでShopの中が土埃の味がします。

私は今キュー作りをして、Daveと私で最初の10本を選んだのですが、1本ジルコッテを入れた時、彼は何も言わなかったんです。
「ん〜これは杢目がとても綺麗だよ、ラッキー」。
それしか言わなかったので、2本入れようとしたら
「ん〜、1本でいいと思うよ」
「???」ま、いいか。
それで1本削ってビックリ!!
「何で教えてくれなかったの??」
「聞かなかったでしょ?削ってみないと分からないよ」
Daveによると、ジルコッテは、仕上がりはNo1、だけどキューメーカーが嫌うNo1でもあるそうです。
大体1本作って皆懲りるそうです。が…Daveは今作っているものを入れて3本目だそうで…。尊敬しちゃいました。
私は1本だけで、も〜いや!!
あと何回削るのかなぁ。
最後は手仕上げだよね、もちろん…  ゲッソリ!!


スネークウッド(画像1)
プールキューのみならず、杖・お箸。小物入れの名札など、最近日本で一番値が上がっているのがスネークウッドです。
万年筆、くし、キーホルダー、木箱の象眼とか…どんどん使われるようになってきて、目にする事も多くなってきていますよね。
産地は南アメリカの北部の小さい国、スリナムという所でご存知の方も多いと思います。
キューに用いられる素材でロスが多いのがこのスネークウッドで、ピンクアイボリーと1・2を争います。
スネークウッドの柄のある部分は、中心部なのですが、中心部にはほとんどにPith(割れ目)があります。
また柄に関しては天然のものですので、大きかったり、小さかったり…黒くなっていたり、薄茶だったりと切ってみるまで分かりません。
キューの長さに必要な、1.5インチ四方のスクエアで、18インチとか20インチの長さの目が揃っている部分なんていうのはなかなかないです。
スネークウッドの杖を、以前に東京の有名百貨店で目にしましたが、非常に高価で驚きました!杖とキューとは似ていても違く、杖の方がずっと細くてO・Kなのです。
スネークウッドの木をキューに用いるのは、Gina・McWorter・Samsara・Manzino・Mottey・Dayton・Padgett・Barenbruggeぐらいです。
Gina、McWorter、Samsaraは割れを防ぐため、貼り合わせて使っています。
1本物の作品では郡を抜いて、Barenbruggeが綺麗です。
L・Aの有名な若手のキューメーカー達は、少し前までは皆こぞってスネークウッドのキューを作っていましたが、ほとんどが割れてしまうため、今では皆、作りたいけど使えない状態です。
スネークウッドは大変オイリーで、まず乾燥するということがありません。
若手のキューメーカーは皆、これを勘違いしています。
エボニーとは違うんです。同じ重さ、硬さに感じるから皆同じように扱いますが、スネークウッドは一番扱いが難しい素材で割れる可能性が高い為、なかなか作品として出てくることがありません。
もし手にすることが出来たなら、幸運ですね。
注意点としては、キューをお店に立てかけて置かないこと。
光線に弱く、色褪せ、割れの原因になります。また湿気にも弱く、湿度が少し高くなると割れます。キューケースに入れて、ビリヤード場に行き、帰りにパチンコ… 夏はおろか、関東以南では春・秋でもダメですね。そういう人は買わないことです(笑)
スネークウッド、昔Padgett、今Daveですね。


ピンクアイボリー
産地は南アフリカ・ジンバブエ・モザンビークですが、大変手に入りにくい木です。
昔はZuru族の王様が全部を所有していて、許可なく切ると首を刎ねられたと言う話しも残っています。
色むらがあり、また大木ではない為に、キューの材料として手に入れるのには一番ためらう素材でもあります。
自分でも今まで二度ほど購入して残念ながら満足するものではありませんでした。
ピンクアイボリーもスネークウッドやエボニーと同じく外側と内側では全く違う色をしています。(画像2)
ピンクアイボリーというだけで高いのですが、赤味が強すぎてパープルハートのようだったり、オレンジや黄色がかっていたり…と1.5×1.5×18インチのキューに使用できるスクエアでは、まず探すことが不可能です。
また黒班がカットしてみると出てくることもしばしばあり、より一層作品に仕上げるのが難しくなっています。
ピンクアイボリーでよい作品を多く残しているのは、Gina・McWorter・Scruggeの3人ですが、ここ数年3人とも良い木が入っていません。
Daveも1本作っていて、あともう1本分残っています。
マーケットの流れとしては、染色した素材(白いホーリーウッドをピンクに染めたもの)を使う傾向で、有名コレクターさんに納品されたピンクの木の5本セットは全てがこの染色素材だったと聞き、私は呆れるのを通り越して悲しくなりましたね…。

天然の素材ではなく、着色して使うのは、量産品のプロダクトメーカーだから許される事です。良い物を全て揃えるなんて、絶対に無理だから黒く塗ったりするんです。
カスタムメーカーのプロダクト化は、我々は断固として“No !”と言いたいですよね。カスタムキューメーカーは良い素材を手に入れる努力を怠るべきではないと思います。Ginaはこの点でもカスタムメーカーの良いお手本ですが、Daveの素材を見抜く眼力もたいしたものです。昔Dayton、今Dave!1本1本の作品・素材の美しさ、作り手のこだわりが見られますよ。


あ、そうだ。昔からの私の疑問ですが、どなたかご意見を下さい。
Gina cueで思い出しましたが、ゼブラウッドをキューに用いているのはGina cue 、TAD・・・あとは誰かご存知ですか?ZYLR?Prewitt?二大巨匠の後に名前が挙がらない素材なんです。
私がマイアミのAbe Richのショップを買ったら、大量のゼブラウッドが出てきました。
Abe Richも作品を残していますが、手にしてみると軽くて加工しやすいのは確かで、反り・曲がりも少なく良い素材です。
ただ、私のこれから作るキューは、Tonyと同じワンピースハンドルなので、メープルより軽い素材は必要ありません。
大量のゼブラウッドをどうしたらいいと思いますか?
DaveもJohnもe-bayに出して売った方が良いといいますが、私はどうしようか少し迷っています。

One man’s trash、another man’s treasure なのかなぁ?